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2009年7月

大河ドラマ『炎立つ』を観る-第17話-

悪役キャラとして燦然とその個性を奥州に撒き散らした清原真衡ですが、残念ながら今回でお別れとなってしまいました。

演じた萩原流行さんは『独眼竜政宗』では、布施定時という政宗の家臣を演じますが、その時はそれほど目立ったご活躍はありませんでした。役柄がそのアクの強いお顔立ちに似合わず、クセの無い清しい男前キャラだったからもあるでしょう。『炎立つ』の萩原さんは御本人もノリに乗っていたのか、その個性を存分に発揮させ、見事毒々しい悪役を演じきり、視聴者の脳裏に強烈なインパクトを残しました。そんな名悪役がまた1人、舞台から去っていってしまうのはなんとも寂しいものです。が、彼が死んでくれないと清衡が表舞台に出て来れませんので、ここは悪役の宿命としてその生涯を閉じていただきましょうcoldsweats01 さて、一体どんな形で真衡は死んでしまうのでしょうか?そして彼の死と入れ替わるようにして、ある人物が「悪役の顔」を見せるようになるのです。様々な人物の思惑が交差する第17話、いよいよ物語はラストスパートに向って駆け出します!

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第17話 -清原分断の罠-

前回、偽装襲撃を画策し、見事国司源義家軍の参戦を促せた真衡(萩原流行)。公権力の後ろ盾を得た真衡軍は劣勢を挽回。一挙に勢いを吹き返します。一方、家衡・清衡連合軍は逆に「逆賊」の汚名を着せられ、一気に不利な状況に陥ってしまいました。しかも真衡はこの偽装襲撃に際し、清衡(村上弘明)と家衡(豊川悦司)に偽の手紙をしたため、自分の館に向けて兵を出させ、さも彼らによって襲撃されたように演出したのです。う~む、本当に敵ながらあっぱれな策略です。誰かさんにも見習って欲しいものですな。十重二十重の策謀にさすがの清衡も舌を巻きます。兄弟2人の前に立ちふさがる真衡の壁はかなり厚いようです。

同じ頃、強引に参戦させられた源義家(佐藤浩市)もまた、まんまと真衡に嵌められたことに、はらわたが煮えくりかえるような思いでいます。事情を聞きにきた乙那(寺田稔、この人どこにでも出没するのねcoldsweats01恐ろしい人sweat01)に、「こんな事だったら経清殿を生かしておくんだった。俺は経清殿の子である清衡殿にこの奥六郡を治めて欲しいのだ。それなのになんで真衡の味方なんかせにゃならんのだ!くっそ~annoy」と真情を吐露します。なんだかよくわからないのですが、義家はえらく清衡を買ってくれています。それを聞いた乙那は大感激です。「清衡がその言葉を聞けばきっと喜ぶでしょう」と、同時に「でもこのままでは清衡は賊軍として殺されちゃうけど・・・・」そう懸念する傍で「いや、策はある!」と強い声で断じる義家。その決意の表情に、そこはかとなく黒~い影が見え隠れしたのはなんなんでしょうか?

形勢が逆転した事で戦は膠着状態に入りました。清衡と家衡もとりあえず自分の館に戻って様子見です。なんせ真衡は国府を味方につけてしまいましたので、下手に動くと完全に「賊軍」扱いにされてしまいます。真衡は出羽にて依然吉彦秀武(蟹江敬三)と臨戦中ですが、敵方の兵がぞくぞくと降伏しているらしく、勝利の女神は真衡に微笑みそうな按配です。これはかなりまずいです。とはいってもうかつに兵も出せないので、しょうがないから人質として江刺の館で保護している清原成衡と遠乗りなんかして気晴らしする清衡。と、そこになんととんでもない知らせが届くのです。

「真衡が陣中で病死しました」

えぇぇぇえええ!なんですとぉ!!?・・・と清衡もうビックリ仰天です。あの真衡がなんの前触れも無く病死です。母の結有(古手川裕子)は「天罰が下ったのよ、ざまぁみろ!ホホホ」なんて無邪気に喜びますが、清衡は腑に落ちません。密かに家臣にその死因を探らせます。その後、清衡の元に、源義家から和議の打診がありました。当事者である真衡が死んだ以上、合戦も意味がありません。義家側からの和議の提案は「逆賊」になりかけている清衡としては大変ありがたいものです。清衡はこの提案を受け入れますが、問題は弟の家衡です。胆沢の家衡館に赴くと、そこには吉彦秀武や清原武衡の2人の親族が来ていました。2人とも真衡が死んだ以上、次の頭領は家衡だと完全に確信しているようで早速ご機嫌伺いに参ったというわけです。2人とも出羽にいたのに頑張りますねぇ。彼ら2人を交えて清衡は家衡に義家の言葉を伝え、和議を受け入れるよう、強く勧めます。しかし、家衡は義家を警戒していて、中々和議を受け入れようとはしません。「俺はあの義家になんか嫌われてるから、和議なんてしたら何されるかわからん!」2人の大叔父も義家が清原一族の内紛に介入してくる事を快く思っていません。「こうなったら義家とも合戦に及んでやる!」と意気盛ん。しかしそれを清衡は止めます。

「義家と戦えば朝廷を敵に回すことになる。国府との戦は絶対に長引く。安倍は10年も国府と戦い、その結果一族もろとも滅ぼされた。清原も安倍のようになってもいいのか?」

安倍の血を引く清衡のこの台詞はかなり説得力がありました。大叔父2人は沈黙。更に家衡に「和議は母上も望んでいることだ。俺も一緒に謝るから」と母親を持ち出してきて、家衡も「母上」という言葉には敏感に反応します。「母上が言ってるんだったら・・・・」としぶしぶながらもようやく、和議を受け入れることを飲んだのでした。

数日後、胆沢城にて義家と面会した清衡・家衡兄弟は平身低頭、義家に謝罪します。義家も2人の従順な態度を認め、「内裏の沙汰がどうなるかわからないけど、良いように取り計らうから心配すんな。」とかなり好意的な配慮を見せてくれます。ただ、家衡は合戦の際に国庫である田んぼを焼き払った経緯があり、それについてはなんらかのペナルティ(来年だけ年貢倍増とか)があるかもしれんけどね、と言い足します。が、最悪の場合は朝敵として成敗されるかもしれないところだったのでそれくらいのペナルティで済むなら安いものです。兄弟は上々の首尾にホッと胸をなでおろします。義家は更に清衡に対して、保護している妹の岐己(高橋かおり)の無事を尋ね、どういうわけか『もうしばらく夫婦2人を預かってくれ。ただし人質じゃなく客人としてね』と妙なお願いをしてこの場はお開きとなりました。

内裏からの正式な沙汰がでるまでとりあえず今まで通りの生活が続きます。その間、清衡の家臣が真衡の死因について幾つか情報を携えて帰ってきました。家臣の調べによると、真衡は病死ということでしたが、実は死んだ直後の真衡を見た人は誰もおらず、しかもその葬式は身内だけでごくごく質素に行われたというのです。陣中の事とはいえ、仮にも「鎮守府将軍」の肩書きを持つ真衡の葬式がまるで人目を忍ぶようにひっそりと行われたというのは不思議な話です。更に、葬式の際に、侍女の村岡(李麗仙)が偶然にも棺の中を覗いており、なんと病死であるはずの真衡の額にはくっきりと『斬られた跡』があったとか。内密に行われた葬儀・病死なのに切り傷、ここまで揃うと怪しさ満点。何かあったに違いない・・・・清衡はそう考えますが、事の真相までには至りません。

にわかに火サスじみてきたところで、大叔父の乙那が江刺の館にやってきます。乙那は義家からの伝言を言付かっており、それはなんと真衡変死に関するものでした。実は真衡は源義家によって殺されたとのこと。義家は真衡の陣中に刺客を差し向け、彼を暗殺したというのです!『策はある』ってこのことでしたか・・・。まだるっこしい策略を使わず『力技』に及ぶあたりが義家っぽいですね。この真衡の憤死のシーンは回想シーンぽくつづられてましたが、これがほんとにホラーのようで、『炎立つ』はいつから『リング』に趣旨替えしたんでしょうか(笑)赤子がひきつけを起こすんじゃないかと心配しちゃうくらい、あまりにも恐ろしい真衡の最期でございました。

真衡暗殺に驚く清衡に対し、乙那は更に義家の言葉を伝えます。曰く、

真衡を暗殺したのは実は貴方のためなんです。私はゆくゆくは清衡殿に奥六郡を治めてもらいたいと思っています!そこんとこよろしくねheart04

というものです。ひぇぇぇっshockなんなんでしょうこのありがた迷惑なお言葉。義家の気持ちが全くわかりません。案の定清衡もこの微妙にうざいラブコールにとまどってしまいます「そんなこと言われても・・・・・一体俺にどうしろっていうんだよ?」本当です。皆あんまり清衡を苛めないであげてください(笑)。

そうこうしてるうちに、とうとう内裏から今回の騒動の沙汰が出てきたということで、兄弟親族揃って胆沢城に参内することになりました。そして義家から2つの沙汰が言い渡されます。まず、家衡は国庫を焼いた罪で向こう1年は年貢を2倍にするということ。そしてもう1つが今後の奥六郡の統治について。真衡亡き後は清衡・家衡の兄弟2人で領地を分割して統治すべし。その内訳は、胆沢・江刺・和賀の三郡を清衡に、稗貫(ひえぬき)・紫波(しわ)・岩手の三郡を家衡に。年貢については従来通りに胆沢の主を介して納める事(つまり清衡の役目になる)・・・・以上の沙汰でした。

これには兄弟はおろか親族一同騒然となります。皆、真衡が死んだ以上その遺産は全て武貞の血を引く家衡に譲られると思っていたのです。それが清衡との分割統治。しかも、清衡に配分された領地のほうが温暖で生産性の高い土地です。更に奥六郡全てから集められる年貢を管理するということは実質的には奥六郡の統括者とみなされても間違いはありません。あまりに清衡有利のこの沙汰に家衡は愕然、清衡を睨みつけます。逆に清衡はただただ驚き戸惑うばかりです。

結局、『文句があるなら朝廷に歯向かうって事だぞ!』と義家に脅され、一同は異議申し立ても出来ずに沙汰を受け入れます。帰る道すがら、清衡の顔は曇ったまま。と、田んぼを挟んで向かい側の道に家衡がいるのが見えました。家衡は馬で駆け寄ってくると清衡を攻め立てます。

「兄者、よくも騙してくれたな!アンタが和議を勧めるからしょうがなく降伏したのに、自分だけいい思いしやがって。兄者は義家と裏で手を組んで俺を貶めたんだ!これが弟にする仕打ちか?こんなことをして・・・・清原一族は黙ってはいないぞ!!」

「卑怯者!覚えていろ!!」と言い捨てて、馬に鞭当て駆けていく家衡。それをじっと見つめながら動く事が出来ない清衡。義家とつるんでいたのは全くの誤解ですが、ここまで待遇の差が明らかだとそう捉えられても仕方ありません。兄弟の間に深い亀裂の走った瞬間です。そして1度入ったひびはもう元には戻せません。清原家の内紛の火種は、くすぶりつづけたまま新たな炎を燃え立たせようとしています。

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いよいよ残り4話です。真衡が死んだと思ったら今度は兄弟間がやばい事になってきちゃいましたね。しかもその溝を作ったのが義家だったとは・・・・。第1部から義家推進派として彼の漢っぷりを絶賛してきた私としてはこのダークな変わりっぷりにかなりビックリです。

義家の一連の行動については、尊敬する藤原経清の息子に対する『純粋に応援したい気持ち』から来るものなのか、それとも義家自身になにか野望めいたものがあってそれを果たさんがために利用しようとしているのか・・・それがまだ判然としないのでなんとも言えません。ただこの回だけ見ると若干前者のきらいが無くもない気がするのです。とするとこれってかなり『善意の押し売り』ですよねbearing清衡は完全にいい迷惑ですよ。2ちゃん風に言うと、UZEeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee(;;;´Д`)ってやつですなcoldsweats01ちょっとマズイですねぇ、これじゃブッキ-兼続と同じになっちゃうcoldsweats02ひぃぃぃsweat01それだけは避けたいゾ!いや、焦っちゃイカン。『炎立つ』はサスペンス×ホラー(笑)風味のドラマティック大河。今までの流れを見ると「昨日の味方は今日の敵」ってパターンが結構ある。今の段階でDQNなハンサム侍と決め付けるのは早いsign01義家にも色々と思うところがあるんだ、そうに決まってる!・・・・というわけで義家の是非については第2部終了まで模様見ということでchick

それからまた色々と地名がたくさん出てきて地元じゃない方は恐らくあまり良くわかんないと思います。一応前に補足として参考地図を載せたのがありますので、御参考にしていただければと思います→コレネ

あと、清衡と家衡に配分された領地の位置関係については、あまりいい地図が見つからなかったので各自でお調べいただければと思います。とりあえず家衡は奥六郡を横に半分にするとちょうど北側の土地(青森県寄り)、清衡は南側の土地(宮城県寄り)ってことだけなんとなく頭に入れておけば良いのではないかとconfident

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政宗終わっちゃった!でも心は黄金色。

『独眼竜政宗』を見終わりました。いやぁ面白かったtulipもう最終回近くになると登場人物皆じいさんばあさんになっっちゃってその老けっぷりの見事なこと。謙様はもちろん、フラメンコ西郷どんも百恵ちゃんの友和君もみんなみんな良い感じに枯れてるんです。女性陣も同様。とても20代後半~30代前半に見えません。スゴイスゴイ!実年齢より年を取らすって結構難しいと思うんですよ。しかも老けメイクしてもそれが似合う顔と似合わない顔があるし。でも『政宗』に登場した皆さんはみんな「作りがいのある顔」なんですね。外見も年寄りに見えるし、そんで演技でさらに枯れた感じを出しているのでホントのお年寄りに見えて全然違和感を感じませんでした。こういうのを『役者』っていうんですよね、本来は。素晴らしいです。

実はあと1人『小粋な男』がいたんですけど紹介してもよろしいですか?つかしますね(笑)この御方down

柳生宗矩(石橋蓮司)

将軍家指南役。使う剣術は柳生新陰流。私、剣豪小説も大好きなんで柳生とか新陰流とか聞いちゃうと嬉しくなってしまいますhappy02宗矩は体制側にいたせいで割と悪役に描かれることが多いんですが、『政宗』の宗矩は政宗がちょっと幕府に喧嘩吹っかけたり嫌味言ったりしてもシレッと右から左に流して更に後ろに回りこむ、そんなしたたかで切れる知恵者として描かれていてかなり惚れますlovely殿中で政宗が宗矩に斬りかかり、宗矩がそれをかわして白刃取りするっていうシーンがあるんですよしかもスローモーション加工で(笑)。ここがマジでカッコいいshineスローモーションの正しい使い方がわかりましたよ私は。槍を盗ったとか盗られたとか、みたいなしょぼいシーンで使っちゃいけないんですね。皆さんこれテストに出ますからねcoldsweats01

というわけでこれにて『政宗』はおしまい。大河ドラマの名に相応しく、1人の漢(おとこ)の生き様を悠久の大河の如く、ゆっくりとじっくりと描ききってくれました。ラストサムライ、渡辺謙様の名演に改めて大拍手ですsign03

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そんでですね、例によって近所のT〇UTAYAがレンタル半額セールでしたので次に見る大河を借りてきてしまいました。余談ですが私、最近白石一郎の小説にハマッています。この方の書く小説はほとんど海洋小説です。水軍とか倭寇とか、海に関係する武将や商人を題材に七つの海を股に掛けるワールドワイドな男たちを生き生きと描いていてこれが異常に面白い!山育ちの私には到底思いもつかない、ボーダーレスな海の世界とそこに生きる人々の自由な姿。そこに私は中世の魅力を感じてしまいます。そんな海洋小説を一杯読んだ後、無性に見てみたくなった大河があります。それが『黄金の日日』です。

『黄金の日日』は1978年に放映された第16作目の大河ドラマです。特徴としては今まで大河というと武士が主人公のものばかりだったのですが、このドラマは呂宋助左衛門という豪商を主役に目線をグッと下げて庶民の暮らしや経済面からアプローチをかけたことです。まだ2話までしか見てないのですがまだ2話目なのに異様に面白いheart04。お話は簡単に言えば呂宋助左衛門の成り上がり大富豪物語です。少年ジャンプ風に言えば、

俺は海賊王になる(byワン〇ース)

的なノリです。松本幸四郎さんが若い。根津甚八っつぁんも若い。夏目雅子さまが美しすぎる。宇佐美の爺様が秀吉演じてる。高橋幸治の信長がエロすぎる(!)。堺の会合衆がサミット首脳会談なみの豪華キャスト(丹波哲郎・津川雅彦・鶴田浩二・志村喬他)。今井宗久by丹波哲郎様の下半身の節操の無さ(2話目でもう下女に子供産ませとるcoldsweats01

普通の大河ドラマとはちょっと趣の異なる『アドベンチャー大河ロマン』とも言うべき代物です。これからも動向を見守っていこうと思います。

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『密謀』 -藤沢周平の直江兼続-

藤沢周平の『密謀』は数少ない直江兼続関連の書籍の中でも、兼続ファンの間で人気の高い作品です。藤沢作品は『蝉しぐれ』『用心棒日月抄」』などそこそこの数を読んできた私ですが、今回初めて『密謀』を読みました。率直な感想としてはとても面白かったです。恐らく直江兼続を主人公とした作品の中では、屈指の出来栄えであることは間違いないと思います。

ただ、ケチをつけるつもりは毛頭ないのですが、同時に「直江兼続」という人物が何故今までそれほど小説やドラマなどの題材として取り上げられてこなかったのか、ということもなんとなくわかったような気がしました。

直江兼続は非凡な才能を持った名将であったことは疑いありません。20歳そこそこでいくら幼い頃から近習として景勝に仕え、信頼を勝ち得ていたとしても、ただそれだけでは一国の家老にはなれません。尋常ならざる才能あればこそのことなのでしょう。それは間違いありません。ただ・・・・この『密謀』を読み終えてすぐ思ったことは、確かにストーリーの展開は非常に面白かったのですが、「直江兼続という1人の男に魅力を感じることが出来なかった」のです。もっと言えば「兼続に感情移入できなかった」。何故だろう?と思いました。で、あーだこーだと色々と考えてみたところ、「兼続に主役としての個性がない」これが一番の問題ではなかろうか、と。誤解の無いように何度も言いますが、兼続は大変優秀な武将です。彼の辿った道をざっと振り返ってみると・・・

5.6歳で景勝の近習として寺に入る→寺で修行・景勝と信頼関係強める→御館の乱で頭角現す→家老に就任→直江家に養子入り→夫婦仲円満→対織田・対新発田で諸々の活躍→上洛後、秀吉に超気に入られる→山城守拝受、兼続名義で30万石貰う・・・・・

とまぁこんな感じです。彼の前半生だけ見ても、「東大出のエリート官僚が進むべき理想的コース」を地で行っているようです。結構な「薔薇色の人生tulipじゃありませんか?そんでもって身長は6尺(180cmくらい)の美丈夫、漢詩が得意で読書好き、教養もあります・・・・見事なまでの『出来杉君』です。素晴らしいです。これだけ完璧であるからこそ若輩の身ながら上杉300万石の家宰の一切を取り仕切ることが出来たのです。ですがぁ!この「完璧さ」が逆に「キャラの個性を無くしてしまった」とも言えるわけです。要するに「優等生キャラは扱いヅライ」という発想と同じです。あんまりに完璧すぎると見てる側とするとかえって別次元の人間に見えて、親近感を抱けなくしてしまいます。人によっては「嫌味」に見えるかもしれません。例えば井上靖版『風林火山』の山本勘助なんかは、兵法の才能が大いにありながらも身体的ハンデ故に周囲に認められず、長く不遇を囲い、仕官したらしたで主君の晴信とその側室由布姫とその子勝頼にのみ盲目的な愛情と忠誠を誓います。軍師でありながらそういう視野の狭いところが勘助の「欠点」であり、我々はそれを愚かと思いつつも、同時に決して突き放せない愛おしさも感じるのです。また、伊達政宗は父親を殺し、母に疎まれ、弟を殺し・・・という壮絶なエピソードがあり、それだけでも彼が尋常ならざる人生を歩み、その度に苦しんできたはずだ、と現代の我々にもそこそこ彼の生き様を想像することが出来ます。

ところがどっこいsweat01兼続にはそういう人間的な弱さを感じさせる外的要因が無いんです。身体的なハンデがあるわけでもなく、かといって不遇であったわけでもない。親兄弟と骨肉の争いもなければ、自身の家庭の内情も決して悪くない。小さい頃から才能を認められ、割合トントン拍子に出世して、そんでもって権力に奢ることなく職務を全うした・・・・絵に描いたような優等生家臣。それはそれで本当に素晴らしいことですが、あまりにソツが無さ過ぎて逆に『可愛げが無い』。『密謀』の兼続は終始「可愛げがなかったdespair

別に可愛げが無くたって全然いいんですが、それを抜きにしても、なんか『密謀』の兼続は人間的温かみが薄かった。他の藤沢作品に比べると、主人公の人物像が突出していなかったような気がしました。どっちかというとオリキャラの牧清四郎の方が生き生きと動いていたような・・・。多分それは「史実」という大きな制約の中でキャラクターを動かさなくてはいけない歴史小説の掟が、藤沢先生を苦しめ、兼続というキャラを自由に描ききれなかったからかもしれません。勘助のように実在したかもわからないような人物ならばかなり創作を加えても良いでしょうが、残念ながら兼続は勘助よりもずっと実在性が高く、しかも勘助よりも大物でした。だからあっちこっち自由に出かけさせることは出来ません。かといって兼続に政宗程の暗い過去があるかというとそうでもない。御館の乱や魚津城攻防戦にしても戦国の世では「よくあるエピソード」で、何も上杉だけが特別じゃありません。直江状や閻魔大王の手紙にしても、見方によれば「逆ギレする危ない人」と捉えかねません。(閻魔大王の話なんか冷静に考えるとかなり無茶な行動ですしcoldsweats01)。結局、

非凡過ぎる才能を持ち合わせながら、その経歴が戦国時代においては意外と「平凡」なことが、個性を必要とする物語の主人公にはネックとなっているのではないか・・・・

これが兼続が主人公に成り得ない要因の一つではなかろうかと推測いたしました。優れた武将が必ずしもドラマや小説の題材にふさわしいというわけではない、兼続は正にその典型ではないでしょうか。現に私のお勧め『義風堂々』は兼続の若かりし頃を「破天荒な傾奇者」キャラにしています。これが『花の慶次』の前田慶次みたいでどうなのそれって!?と批判する人もいるんですが、これも結局そこまで強烈なキャラ付けをしないと兼続を主人公として輝かせることが難しいからなんだと思います。

直江兼続は下手な作り手が軽い気持ちで手を出すとエライ目にあうウルトラD難度のキャラクターです。彼を光り輝かせるにはどうすれば良いか。私は主役ではなく、2番手・3番手の脇役に甘んじた方がその魅力を発揮できるんじゃないかなぁと思います。なにせ彼は組織のNo2です。もともと主役である必要なんてないんです。片倉小十郎が全国にその魅力を振り撒いたのは政宗という主役がいたからです。政宗の壮絶な人生を描く中で、常に側で支え、忠義を尽くす姿、それを政宗という媒体を通して見たからこそ私達は彼の素晴らしさが理解できたのです。政宗という太陽があってこそ小十郎は光り輝く、正に『蒼き月影の如く』(懐かしいなぁconfident)。だから兼続も「味のある脇役」としてだれかの光を反射することで初めて燦然と輝くキャラになるんではないでしょうかshine

『天地人』の兼続は残念ながら皆さん周知の如く、下手な作り手が軽い気持ちで手を付けた最悪のパターンとなってしまいました。『密謀』は確かに歴史のうねりの中で兼続の個性が埋没してしまった印象もあります。しかし!藤沢先生は「優れた作り手」でした。その代わりに、戦国乱世の殺伐とした様相、権力者達の政治的駆け引きの妙、ストーリー展開の巧みさ、義のために意地を通す上杉侍の心意気、そしてその義が抗えぬ歴史の流れによって終焉を迎える寂寥感、そういう景色を作品の中に存分に込めることに成功しています。それだけで十分この作品は「名作」足りえると思います。私自身は兼続に最後までイマイチ感情移入出来ませなんだが、それでも兼続が家康に降伏する事を諸将に説得するシーンは、一つの時代が終わることへの寂寞の念をヒシと感ずることが出来ました。最後はその兼続渾身の名台詞で締めたいと思います。

『武者は名を惜しむべきである。しかしながら家の名を残すために、時には堪えがたい恥をしのばねばならぬこともある。それも武者の道である。』

『わが胸の内も諸将と同じことよ。やる方ない無念の思いは、なお胸にあふれてやまぬ。しかしながら天下の大勢は、すでに決したのである。殿は忍ぼうと仰せられた。われらも殿にしたがって堪えねばならぬ』

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久々に『風林火山』を見た-ツンデレ姫しゃま-

前回の続きtulip

そういうわけで諏訪氏贔屓の私は、当然由布姫が好きだ。というか『風林火山』の中でいっちゃん好きだ!大好きだ!!ミツやんの土臭さも、りっちゃんの健気さも、三条夫人のしとやかさも、あの圧倒的な存在感、泣きたくなるほど戦うことでしか己を表現出来ない『不器用さ』、これを前にしたら私の中では霞んで行ってしまう。すごい女優が出てきたもんだ。ああいうタイプの女優って昭和の終焉とともに絶滅したと思っていたら・・・21世紀にも生き残っていたよ!若泉Pグッジョブだぜgood

最視聴してみると1回目に見た時には考えなかったことも思いつく。

勘助はどうして由布姫を助けたのか?姫しゃまが持っていた摩利支天の首飾りを見て、生きることに執着していたミツやんとリンクした、とドラマではなっていたけど改めて見直してみるとどうも後付け感が否めない。そんなことではないんじゃなかろうか。もっと単純な事だと思う。個人的に思うに、なんで姫しゃまを助けたのか―

姫しゃまが生きたい!て言ったから。chick

詰まるところこれに尽きると思う。え?意味分からない?・・・あらまぁcoldsweats01えっともっと噛み砕いて言うと、要は理屈じゃないんだよ。ホラ、恋愛ドラマとかで友達に「なんであの人好きになったの?」て聞かれて「理由なんて無いの。ただ好きでしょうがないの!」なんて言うシーン、よくあるでしょ?アレだよアレ。『ただ生かしたい、理由なんて無いの』それだけなんだと思った。こういう不条理かつ観念的な理由が姫しゃまと勘助の間では成立しうる状況だった。で、それを可能にさせてくれたのは姫しゃま役の柴本幸嬢の活躍があったからだと思う。

とにかく彼女は声が良い。低すぎず、高すぎず、すごくよく通る声。天性の素質なのか、大学時代の演劇サークルで訓練してたのか(サークルっつっても熱心にやるサークルはやるしね)ホント良い声heart04彼女の声には力がある。ちょっと一声彼女が発するだけで、その場にいる人、TVを見ている人の意識をグワッと自分に向けさせることが出来る。どんなに無茶苦茶な命令でも、彼女が言えば即座にははぁ~とひれ伏すしかなくなっちゃう。理屈じゃない、体がそう反応してしまう。諏訪氏という格の高い、また神的な側面を持つ家に生まれた凡人とは異なる別格のオーラを、彼女はその声で、その身体全体で発することが出来た。姫しゃまが『生きたい!』て言った時、勘助は完全に姫しゃまの霊的オーラに圧倒されちゃった。だから『姫様をお連れ申す』なんて普通じゃ考えられないことを言っちゃったんだと思う。だってちょっと前まで一族全員殺す、殺すって言ってた人なんだよ、勘助は。政治的側面から見れば絶対生かしちゃいけない姫しゃまだから、可哀想だとか昔の恋人に似てたから、とかいうスイーツな理由じゃ兼続ならばともかく(笑)絶っ対勘助は心動かされないはず。理性も常識も飛び越えた本能の部分に訴えかけられたからこそ、勘助は助けちゃったんじゃないかなぁ。

勘助も多分後で『なんで俺あの時あの姫しゃま助けちゃったんだろう?わけわからん。やっぱ殺した方が良くね?あぁ~でも殺せないわ。なんでぇ?』なんて思ったんじゃなかろうか。人間って結構簡単に感情に左右されてしまう面があるからね。ずっと理詰めで生きてける人ってなかなかいないんじゃないのかね。

ただ、「ドラマ」という代物は起承転結があって、理詰めである程度描かないと視聴者が納得しない。「なんとなく」みたいなぼやっとした理由じゃ許されないからあんな演出にしたんじゃいのかしら?本当は勘助と姫しゃまにはもっとこう、スピリチュアル的な何か発動したんだと思う。それを感じさせてくれる柴本嬢の演技だった。ほとんど初めてのドラマ出演であれだけ出来れば十分だと思うよ。あの程度も出来ない自称女優って人一杯いるもの。たいしたもんだいconfident存在感とかオーラって努力じゃどうにもなんないからね。これはすごく大事な才能だと思う。

あの衝撃の『運命の出会い』で私のハートもがっつり掴んで離さない見事な演技を披露した柴本嬢。私すっかりファンになっちゃって、その後の動向もちょこちょこチェックしちゃったりしてる。

なんか近々主演映画が公開されるらしい。予告動画見たらおもしろそうだった。http://www.natsu-yume.com/ コレね

で、9月にはこれまた映画で小栗旬君と共演するらしい。http://wwws.warnerbros.co.jp/tajomaru/ こっちね

安っぽい民放ドラマになんか出演しないで、いい脚本のいい作品に出演していって欲しいわconfident

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久しぶりに『風林火山』を見た-エコな軍師-

近所のTS〇TAYAではちょくちょくレンタル半額セールをやっていて、それを機に久々に『風林火山』を借りて見た。

マジでおもしろかったhappy02

現在諏訪攻め編に突入してるのだが、おもしろい。ファンの間では海ノ口城攻めのシーンが一番好き、という意見が多いのだが、確かにその回もいいけど私は諏訪攻めにおける政治的駆け引き好きだ。

私は意外と合戦に対しては結構どうでもいいと思ってる。時々いる合戦マニアのように、ハリウッドばりのスケールのでかい合戦シーンなどN〇Kの予算では到底無理と思っているので正直全く期待していない。ただ、たとえちゃちいセットであっても見せ方によって「臨場感」が生まれるので、そういうところを工夫してとにかく「らしく見せて」くれれば別になんでもいい。時代考証がちょっとくらい間違っていても良い。とにかく「らしくあれば」良い。それよりも合戦に至るまでの経緯、内応・調略・裏切り・謀殺等々・・・そういう政治的な黒い部分の方にずっとずっと惹かれる。見ててワクワクする。すんごく楽しい。

軍師というと合戦時に策を巡らせる役と思いがちだがそうではないな、と気付く。戦国時代というと合戦ばっかりやってたかというと意外とそうでもなかったらしい。ほとんど合戦はしていなかったとなんかの本で読んだ(確か藤木久志氏の本だったっけか?)。なんでかっていうととにかく『金がかかる』から。合戦1回やるだけでそれが大きかろうと小さかろうと出費がかさむ。だからほとんどの場合、内応や和議などの『話し合い』で解決させていたとのこと。桶狭間とか川中島とか関が原とか・・・歴史に残る合戦はつまり『すごく珍しくて、大きな合戦だったから記録に残った』からだとか。目から鱗の落ちるお話だ。

それに、基本的に武士って『合戦のプロ』だから、百姓とかに比べれば断然強いし、よっぽど才能ない奴以外はそれなりに場数を踏めばそこそこ合戦も上手くなるはず。だからただ単に合戦だけやるならば別にそれほど軍師は必要じゃないと思う。普通の武士に出来ず、軍師に出来ること・・・それは『出費をいかに抑え、犠牲をいかに少なくして合戦に勝つことが出来るか』を考えられる、つまり『省エネ合戦』を提案出来ることなんじゃなかろうか。

諏訪攻めはすごく『省エネ合戦』だった。高遠を唆して戦を引き起こさせ、戦になると松明をたくさん掲げて兵の数を多く見せて敵を退かせ、そんで和議に持ち込む・・・武田方はほとんど兵力を失っていない。正しく『エコ』時代を先駆け、地球に優しいエコキュートな合戦をやってのける、そんな勘助に痺れたゼ!

ちなみにこんだけ勘助褒めといて私、諏訪攻めにおいては終始諏訪氏の味方でした(爆)だって私は信濃の子なんですもの。仲代さんから始まって亀ちゃんもウッチーもみんなして信濃を攻める、佐久を攻める、諏訪がどうのって・・・・

いや、来なくていいから(笑)coldsweats01

TVに向かってマジ突っ込みしちゃったよホントに。もう甲斐で頑張って!いきなり攻められても逆に迷惑だから!それと善光寺の秘仏パクらないで!勝手に自分の国に善光寺町とか作っちゃダメよ!(謙信アンタもよdash

『風林火山』が初めて放映されたちょうど1週間くらい前に私は大学の卒論を提出した。奇しくも題材は武田氏が侵攻してくるちょっと前までの信濃の勢力図についてで、その一環で諏訪氏に関しては結構突っ込んで研究してた。だから諏訪氏に対する思いはそこそこ強い。なので俄然諏訪氏寄りなのはしょうがない。何度も言うけどだって私は信濃の子なんだもんbleahだから諏訪氏の話なら私結構暑苦しく語っちゃうゼ!でも話し始めたら終わらないから一つだけ。

あのね、おのれおのれ!の高遠さんなんだけど、彼の名誉のためにフォローさせてもらえるなら、彼自身はもしかしたらあんなユーモア溢れる小物キャラだったかもしれないけど(笑)「高遠氏」という一族は諏訪氏を語る上ではかな~り重要だから。「北斗の拳」のモヒカン達みたいな雑魚キャラじゃないから。そこんとこひとつヨ・ロ・シ・クwink

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大河ドラマ『炎立つ』を観る -第16話-

大変長らくご無沙汰していました『炎立つ』のレビューですtulip

現在『炎立つ』と並行して『独眼竜政宗』を見ているわけですが、『政宗』と『炎立つ』は時代が全く違うのに妙にリンクするところが多いことに気付きます。

政宗が礎を築いた仙台藩、現在の宮城県は『炎立つ』の舞台でもあります。宮城県には多賀城という国府があり、これは律令体制下では東北の拠点として代々陸奥国司が赴任するのです。源頼義・義家親子はここから安倍氏討伐に出発しました。またドラマ『独眼竜政宗』では政宗(渡辺謙)が、従弟にあたる伊達成実(三浦友和)に亘理城を与えるというシーンがありましたが、その亘理(現:宮城県亘理町)という地域は、『炎立つ』において藤原経清が支配を任されており、彼は「亘理の経清」なんて呼ばれていたとも言われています。『炎立つ』は渡辺謙が白血病からの復帰後初のドラマ出演と言うことだそうですが、その復帰第一作が『政宗』から500年以上時を遡り、同じく奥州が舞台というのは何かとてもご縁のあるお話です。

一説によると政宗自身も己を奥州藤原氏の生まれ変わりと言っていたとか聞いた事があります。伊達氏の祖先も同じ藤原氏だったことからも、陸奥に一大王国を築いた奥州藤原氏の威明にあやかりたかったのかもしれません。独眼竜も一目置く「奥州藤原氏」、その礎をいよいよ清衡が築いていこうとしています。壮絶な遺産相続戦はついに武力衝突に発展、風雲急を告げる奥州戦線!それぞれの野望が渦巻く第16話です。

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第16話 -清衡の反乱-

前回、真衡のガン無視接待にキレた吉彦秀武(蟹江啓三)はとうとう真衡に対して挙兵を決意し、自分の領地である出羽山北郡に帰ってしまいました。反対派の先頭に立つ家衡(豊川悦司)も、叔父の挙兵に大喜び。秀武と示し合わせ南北から挙兵して真衡を挟み撃ちにしようということでで早速挙兵の準備に取り掛かります。叔父と弟の挙兵を隣りで聞いていた清衡(村上弘明)は、江刺の自館に戻り、どうしたものかと悩んでいます。今回の遺産相続争いは清衡は完全に蚊帳の外です。なので清衡的には別に誰が争おうがどうだっていいのですが、養子とはいえ清原家の次男である以上、巻き込まれるのは必須。自身の進退をどうするべきか、で清衡は悩んでいるのです。とそこへ胆沢の館から母の結有(古手川裕子)がやってきます。結有の要件は案の定家衡に関すること。

『挙兵を企てている家衡に味方してくれ』

というものでした。清衡は困ります。何度も言いますように、兄弟といえども清衡の父と家衡の父は敵同士なのです。もし家衡が真衡から家督を奪う事が出来ても、藤原氏の再興という清衡の願いは果たせません。結局清原家に組する事に変わりはなく、更に弟に臣下の礼を取らなくてはいけないのですからこんな馬鹿な話はありません。更に、秀武の挙兵は武貞の喪中の間に起こったもの。大義名分は真衡側にあるのです。真衡はそれを見越して秀武を怒らせようとしたのです。秀武・家衡の連合軍は完全に分の悪い戦いです。母の結有としてもその辺の事情が薄々わかっているから清衡に助力を仰いだのでしょうが、清衡としては共倒れは御免です。渋い顔でなかなか返事を出せない清衡に、結有はついに必殺泣き落とし(笑)を発動させ、後に控える貴梨(坂本冬美)や菜香(鈴木京香)の同情を誘い、そんでもって母の泣き落としにはかなわん!と清衡もついにしぶしぶながらも助力の要請を受けいれるのでした。

結有に次いで家衡も家臣の千任(せんとう:織本順吉)を引き連れ、助力を請います。

「兄者、日頃は生意気ばかり申していますが、いざこのような時は兄者の助けなくてはどうにもなりません。兄者が味方についてくれるだけで手前は心強いのです。どうかともに立ってください!」

とこちらも泣き落とし(笑)。清衡が挙兵の事を告げると、家衡は喜色満面。してどのように攻めるか・・・という具体的な話になると家臣の千任が「清衡様には真衡様の養子2人を人質として捕えて頂きたい」と言ってきました。真衡の最終秘密兵器と言っても過言ではない夫婦2人を人質にして、大義名分を掲げて分のある真衡の勢いを挫こうというわけですが、うら若い青少年を人質に取るなんて非道な作戦に清衡も眉をひそめます。千任は後々面倒な事になった時罪を押し付けて言い逃れが出来るよう、あえて清衡にその嫌な役を頼んでいるのです。そういう損な役回りなんですが、清衡はなんとOKしてしまいます。あっさりOKした清衡を見て、家衡主従は喜ぶと同時に拍子抜けしたようです。清衡がいなくなると、家衡は先ほどのウルウルお目目をコロッと引っ込めて

『人が良いの・・・昔はもっと芯のあるお方だった。我慢を重ねるうちに己の道を見失ってしまったようじゃ。哀れなものよ・・・』

などとクソガキのくせに超上から目線で嘲るのでした。

さて、小馬鹿にされたお人よし清衡ですが、こちらもただのお人よしではありませんでした。夜、妻の貴梨が家衡が涙を流してお願いするシーンに感じ入ったことを告げると清衡は「空涙(そらなみだ、嘘泣きのことですね)は女だけのものではないぞ」なんて言うのです。思いがけない冷たい夫の言い草に「そんなこというなんて・・・貴方の口からそんな台詞聞きたくなかったです」となじる貴梨。「まぁ夫婦だからといってお互いのこと全部わかるわけじゃないしね」なんて言う清衡。このやり取りはなかなか興味深いです。人が良いだけの男と思われていた清衡ですが、この妙に冷めた言い回し。腹の内では色々考えてるんですね。なかなか侮れません。徳川家康のようです。でも家康よりかなりの男前ですので、私は全然気にしませんよ。正に「綺麗な花には棘がある」(笑)美形で腹黒なんて素敵じゃないですかlovelyブラック上等!もっとやれ!

所変わってこちらは真衡陣営。吉彦秀武の挙兵に真衡は「待ってましたぁああ!」とばかりにこちらも大喜びです。真衡としては自分が家督を継ぐ上で必ず家衡や親族の秀武が厄介な存在になることはわかっていますので、この際邪魔な存在は片付けてしまおうという魂胆なのでしょう。秀武への無礼な振る舞いも怒りを煽らせ、挙兵させるためのものでした。「喪中と触れを出したのに挙兵するなんてけしからん!成敗してくれる!」と8千の兵を率いて秀武の立て篭もる出羽山北郡に出陣しました。で、その間、弟の家衡が秀武と示し合わせ、留守を狙って胆沢の真衡館に攻め入り、養子夫婦2人を人質にすることも真衡はわかっておりました。養子夫婦の娘、岐己(高橋ひとみ)は源義家の妹です。義家は吉次一族の賄賂作戦が効いたのか(笑)めでたく陸奥守として多賀城に赴任することとなりました。可愛い妹が人質に捕られたとあっちゃぁお兄ちゃんだって黙っちゃいない、必ず真衡に味方してくれる。陸奥守という公権力の助力があれば、ますます大義名分は真衡側に重くなる・・・・真衡はこういうことまで見越した上で今回の作戦を立てていたんですね。なかなかの策士ですねぇ。敵ながらあっぱれです。

清衡は挙兵を決意すると電光石火の勢いで真衡館を急襲。おびえる成衡と岐己に対し、「危害を加える事は決して致しません」と誠実なお顔で説得、江刺の自分の館に丁重に迎え、応対します。そして2人以外の人質を家衡の館に送ります。家衡は肝心の夫婦が自分の元に送られてこない事に驚き、清衡の行動に警戒心を顕わにします。

「兄者・・・・一体何を考えている・・・・?」

清衡もただ家衡の言うとおりにして、割を食うつもりなんてさらさらありません。人質確保という損な役目も、自分の手許に置いておけばおいそれと攻撃される事はない、ピンチをチャンスに変える清衡の不屈の精神が光ります。

出羽山北郡にて秀武軍と対陣中の真衡もまた、予想通りの家衡軍の襲撃に膝を打ちます。しかし、館を襲ったのが家衡でなく清衡であったことには驚きを隠せませんでした。兄弟揃って攻め入ってくるか、あるいは清衡は真衡に味方し、静観するものと思っていたからでしょうか。

「清衡め、甘く見ておったわ・・・」

真衡は早速陣を引き払い、軍を一路多賀城に向けて進めます。狙いはもちろん、陸奥守源義家に協力を要請するためです。

100%自分たちに味方してくれるであろう、とたかをくくっていた真衡ですが、 「いや、協力は無理だわ」と義家にすげなく断られてしまいます。「え?どゆこと?意味わかんない??」と目が点になる真衡。義家曰く、今回の騒動は詰まるところ清原一族の身内同士の争い、「私闘」なので、その場合国家権力は介入してはいけないというルール。だから加勢は無理というわけなのです。「妹と仕事は別だから」と冷静な顔で言われてしまっては、グウの音も出ません。「とりあえず私闘かどうかを確認するために監察役を胆沢に送るから、その結果を待って考えるし」とのらりくらりと言われ、真衡はすごすごと引き返すしかありませんでした。

完全にアテが外れてしまった真衡は逆に不利になってしまいました。「なんとしてでも義家に内戦に介入させねばならない」とまたまた一計を案じます。後日、国府の監察使として義家の家臣2人が胆沢の真衡館を訪れます。しかし、なんとそこには女ばかりしかいない有様。男達は皆、戦に出払ってしまったとの事。と、そこへ家衡の軍勢がこの館に攻め寄せているという知らせが入ります。女達に取りすがられ、監視の家臣2人はやむなく手勢を引き連れ、合戦に参加することになってしまいました。そしてこれこそ正に真衡の狙っていたことなのです。真衡は何とか義家たち国府の軍を味方に引き入れるため、自分の館に女たちだけを残し、自分の軍勢を家衡軍と称して館を襲わせ、監察役の義家の家臣に応戦させることで、『国府軍が兄弟の争いに介入した』という事実をでっちあげようとしたのです。知らせを聞いた義家は多賀城で舌打ちをします。

「馬鹿め!これでは我らは清原一族の内紛に手を貸したことになるではないか!」

こうして好むと好まざるとに関わらず、義家は真衡の側に味方することになってしまいました。そして国府という公権力の後ろ盾を得た真衡は劣勢を挽回、清衡・家衡兄弟は逆に「賊軍」という窮地に陥ることになってしまったのです。

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第1部でも阿久利川の陰謀や、国府と和議を結ぶため、安倍一族が色々策を巡らすシーンがありましたが、『炎立つ』はこういう策略めいたエピソードが随所に挿入されてます。第1部の阿久利川陰謀篇では頼義が自作自演で安倍を窮地に立たせましたが、第2部でその息子義家が逆に真衡の自作自演に引っかかっちゃったというのは、なんとも因果なお話ですcoldsweats01でもこういう策略エピソードってワクワクしますね。

さて、第2部では清衡・家衡の母、結有の動向も見逃せません。

結有は『独眼竜政宗』のお東の方に続く困ったお母さん枠に入る強烈キャラです。見ている人の多くは「困った人!」「なんだこの母ちゃんは!」と怒りを顕わにするかもしれません。が、彼女の辿った人生を振り返ってみるとそうそう罵倒ばかりは出来ません。夫を殺した男の妻になる・・・・もし自分がそのような状況に置かれたとき、冷静に、そして誇り高くいられるでしょうか。たとえ凌辱の上に産まされた子であれ、腹を痛めた我が子を復讐のために殺す事が出来るでしょうか。私は花の独身貴族なんで親子の情については未だわかりかねるところもありますがcoldsweats01こういう極限状態に身を置いた時、自分が冷静な態度でいられる自信は全くありません。人間というものは「強く・賢い生き物」であるのと同時に「弱く・愚かな生き物」でもあるのです。視聴者はドラマの登場人物に憧れやこうあってほしいという希望を託すので、見苦しい振る舞いに時には嫌悪感を覚えるやもしれません。が、残念ながら大河ドラマはドラマでありながら、史実でもあるのです。史実の中に生きた人々は私達と同じ「時に賢く、時に愚かな生き物」です。だから視聴者の希望通りに、彼らが御伽噺のヒーロー・ヒロインが如くいつまでも美しい姿、正しい姿を見せてくれることは不可能だということに私達は気付かなくてはならないと思います。こうした理路整然とはいかない複雑な人間描写に、人間の本質が込められているのではないか思うんですよ。私は最近こういう人物が結構好きです。近くにいると面倒くさいですけど、遠巻きに見るとなかなか興味深い。

我が子のためならば母親は時に驚くほど強くもなり、時に驚くほど愚かにもなれる・・・・・清衡のために屈辱に耐え、敵将の妻になった強さも、家衡のために後先を考えずに清衡に助力を請う愚かさも、どちらも母親の姿であり、そこにはただただ我が子を救いたいという一点のみがあり、それだけを見れば結有に矛盾はないのです。しかしそこに矛盾が生じるのは他ならぬ敵同士の父を持つ兄弟ゆえの結果。母の情愛ではどうにもならない非情な血の宿命がこの母子の上には横たわっているのです。如何に結有が足掻こうとも、彼女の行動は所詮“付け焼刃”に過ぎず、兄弟はどの道争うことになり、それを考えると結有・清衡・家衡の3人の行く先は限りなく暗く、そこに待ち受けるものは“悲劇”以外の何ものもありはしないのです。

第1部では鈴木京香の美貌に押されがちだった古手川裕子さんですが、第2部では哀れで愚かな母親を熱演しております。特にその完璧な老けメイク(これがホントすごい!)には脱帽です。女優魂・役者魂とはこういうことを言うのでしょう。その心意気、信念は正に『漢』!仮にも役者って肩書き付けてんならやっぽこれくらいやんなきゃダメだよ若い諸君。

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