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義風堂々な漢を知ってるかい?

私、侘助が直江兼続の存在を知ったのはかの名作『花の慶次』からでございます。私は大学で中世を専攻していたのですが、実はそのキッカケとなったのもこの漫画なのです。(正確にいうと、この漫画で隆慶一郎氏の存在を知り、そのすぐ後に隆氏の『影武者徳川家康』を読んで中世にハマッたのですが、まぁでも全てのスタートは『花の慶次』からと言っても過言じゃないです)

『花の慶次』は御存知、前田利家の甥、天下無双の傾奇者前田慶次が主役の痛快戦国物語です。兼続はそうそう頻繁に出てくるわけではなかったのですが、兼続自体が漫画に登場するなどそれまではほぼ皆無だったので、おそらく多くの人は直江兼続っつったら『花の慶次』を思い浮かべるのではないでしょうか。

さてその『花の慶次』ですが、大河ドラマ「天地人」に便乗してなんと直江兼続主役の続編が連載される事になったのです!それがこれダdown

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残念ながら原哲夫先生は今回原作に回り、作画は武村勇治先生が担当する事に・・・。原先生の圧巻の劇画を楽しみにしておられた方々はいささか残念なことですが、しかぁし!その中身は、本家本元の「天地人」に反比例してワクワクドキドキの中々スリリングな展開になってきて私の中で俄然注目度が上がってきています。

ちょっと・・・というかかなりネタばらししちゃうんですけど、でも名前出すのはアレなんで「天地人」の役者さんで言わせてもらうとですね・・・・・

「妻夫木聡は阿部寛の子供だった」

てのが話の鍵になっとるわけですよ。

え?なんですって?

んなアホな!ふざけんな!馬鹿にしとる!・・・・・ハハハハ、これはしたり(笑)

お怒りの方々の心中も察するに余りありますが、これこそエンターテイメント時代劇の妙」ではありませんか?もともと『花の慶次』の原作者隆慶一郎氏の時代小説は司馬遼太郎のような史実を元にした歴史小説というよりは山田風太郎のようなフィクションをふんだんに織り込みながら娯楽性を重視する伝奇小説の風合いが強いです。『花の慶次』の原作「一夢庵風流記」もそうですし、「影武者徳川家康」なんて関ヶ原で本物は死んじゃって影武者が頑張る話なんですから。「ブッキ-が阿部寛の子供」てのも実は俗説としては世に出回っているんです。まぁ俗説も俗説、信憑性は全くありませんから都市伝説のようなものでしょう。しかし漫画もドラマも娯楽ですからそういう俗説を用いたとて非難される筋合いはありません。大事なことはそのフィクションを用いる事で「作品で何を伝えたいのか」という事だと思います。「天地人」で言えば、初音というオリキャラを出す事でドラマでどういう役割を担わせたいのか、それを明確にしないと「史実」という制約がある歴史ドラマではたちまちそのフィクションが浮いた存在になってしまいます。史実に絡ませられるような「リアリティのあるフィクション」というのが重要なんですね。

本作はこの「ブッキ-=阿部ちゃんの子供」説を作品の重要なキーポイントとして使用しています。上杉謙信が生涯不犯を唱え、毘沙門天の化身として自らを神格化させたのは、当時の越後における自立した国人領主層の掌握が目的であったとしています。戦国時代は国人領主がそこかしこにはびこっていました。「風林火山」では相木市兵衛とか平賀源心とかがそうですし、越後だと有名なのが阿賀北(揚北)衆ですね。こういう人たちは強い勢力に付いたり離れたりを繰り返して自分達の土地を守っていました。で、国内統一をめざそうとする者としては、各地に根を張る国人領主をどう自分の勢力下に取り込んでいくかが至上命題になるんですね。信玄もそれで苦労したようですし、私の故郷の長野なんかは逆に飛びぬけて強い領主勢力がなかったため、各地で小規模な国人領主が好き勝手やってるうちに外部勢力が侵入してきちゃった(←所謂武田軍による諏訪攻めなどですね)という顛末です。そんな中、謙信はその国人領主勢力を取り込むため自分を神の位まで高めます。このカリスマ性が越後をまとめる原動力になっていました。でもそんな神に等しい人が子供をこさえていたなんてことになったら・・・・・coldsweats02謙信の神性は地に落ち、たちまち上杉家は崩壊していってしまいます。上杉としてはなんとしても隠さなくてはならない秘密であり、逆に上杉家の崩壊を企む奴らにしてみれば、この秘事は上杉潰しの格好の材料になるわけです。

この秘中の秘とも言える上杉家最高機密を巡り、水面下の心理戦が繰り広げられるのです。上杉を潰そうとする織田信長、その上杉を守ろうとする謙信、直江景綱など・・・その中で宿命の子、樋口与六はどういう生き方を選んでいくのか・・・・突飛なフィクションが非常に良いスパイスとなって物語を引っ張っていっているんですね。かといって作中の雰囲気は決して暗くはなく、直江兼続の爽やかな男っぷりと要所要所で繰り広げられる原哲夫先生御得意の「漢の生き様」がキラリと光り、読了は爽快感を覚えるほどですshine

あとですね、この漫画ではちゃんと「義」の定義を明確にしてるんですね。「天地人」は義、義と連呼はするものの義がどういうことなのか全くわからないことで定評がありますが(笑)、その点「義風堂々」はきちんと定義しています。曰く・・・

-義という字は「羊」に「我」と書く。「羊」は「美」の語源であり、つまり我を美しくするということである。すなわち義とは「己にとって美しく生きる」ということである-

というのです。これは『花の慶次』でも同じような定義をしているわけですが、この定義を鑑みてみると、兼続が直江状を書いた経緯もなんとなくわかるような気がしますね。秀吉死後、家康は天下取りのために各地の有力大名を取り込み、なびかなければ難癖つけて合戦の糸口を見つけようと躍起になっていました。家康にとってはこの機が千載一遇のチャンスですからそりゃもうなりふりかまっちゃいられなかったのでしょう。でも兼続からして見ればそういう家康のやり口を「美しくない」と判断したんでしょうね。長いものに巻かれるより、例え家を滅ぼしてでも己の意地を通したい・・・兼続ひいては上杉家はそこに「己の美」を見出したのかもしれません。その決断は大変爽やかで胸のすくものですが、その美しさこそが兼続の「器量の限界」であったとも言えるのです。美しいだけじゃ勝てない・・・う~ん人生って無常だなぁweep

コミックスは現在2巻まで出ています。本誌ではこの前お船様が登場しました。このお船様が中々可愛らしくって凛々しくって侘助的にはツボなんですよheart04常盤お船の本来あるべき姿がここにありましたね。あと景虎の濃すぎるキャラにコンビニで腰を抜かしそうになりました。毎週金曜が楽しみでたまりません。

大河ドラマの「天地人」にイマイチ熱くなれないそこのアナタ!ちょいと色眼鏡を外してみて、この『義風堂々』食してみてはいかがでしょうhappy02

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コメント

侘助さんこんばんは。
実はレビュ丸も『花の慶次』大好きで、原哲夫先生の圧倒的な筆遣いと迫力ある描写のトリコになった一人です!! でも今回、『義風堂々』なる作品が世に出ていること、恥ずかしながらはじめて知りました・・・。さっそく本屋でチェックせねば!!

「男」でなく「漢」・・・。うーむ良い響きですねェ。『天地人』には「男」は出ていても、「漢」は出ていないような気がします。『義風堂々』を読んだら、なおさら落差に苦しんでしまうかも知れません!? N○Kもボーイズラブなんて言わず、こういう「漢」な作品を配信すれば良いのですが・・・ね。

投稿: レビュ丸 | 2009年5月20日 (水) 19時53分

レビュ丸さまコメントありがとございます。
な、なんとレビュ丸様も『花の慶次』フリークだったとは・・・!!いやぁ嬉しいです!なんせ周りには『花の慶次』の話できる人なんていないものですから。
いいですよね『花の慶次』。『北斗の拳』も良いですが、やっぱり私は『花の慶次』の漢の生き様が好きですね。登場人物たちが『凛』としていてとっても清清しいんですね。読んでて爽快な気持ちになります。

原哲夫先生はかつてのハードスケジュールが祟って漫画家がよくなる眼の病気になってしまって片目が見えないそうなんですね。
今も違う漫画を連載してるんですが、片目だけで気合で描いているのだとか・・・。
もう先生御自身が『漢』です。
『義風堂々』もそんな先生の熱い魂が込められた素敵な作品ですのでレビュ丸さまも是非是非本屋に行って見て下さい!
というかいっそのこと、『天地人』の脚本も原先生がやってくれたらいいのにって思いますよ。
むしろそれが良い!

投稿: 侘助 | 2009年5月22日 (金) 01時05分

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